2015年11月11日

11,無資格マッサージ - 補足説明

最高裁の主旨は、医業類似行為が公共の福祉に反する業務行為と立法が認定したからこそ、法律に基づくあはき法第一条に掲げている者、つまり、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、後に独立法制化した柔道整復以外、「業としてはならない」として、「あはき法第十二条」で禁じており、その第十二条が職業選択の自由を保障している「憲法第二十二条」に反していない「合憲な法律」だと述べているのです。

つまり、最高裁も医業類似行為を業とすることが、公共の福祉に反するもの(健康に害を及ぼす恐れのある業務行為)と、立法が認定した事を否定しておらず、その違法性も認定しておりません。職業選択の自由が憲法で保障されている以上、人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解すのは当然であり、立法が恐れを認定したからこそ法で禁じているのです。

しかし、旧厚生省医務局長通知で「判決は、前項の医業類似行為業について、禁止処罰の対象となるのは、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務に限局されると判示し、実際に禁止処罰を行なうには、単に業として人に施術を行なったという事実を認定するだけでなく、その施術が人の健康に害を及ぼす恐れがあることの認定が必要であるとしていること。」と、立法が健康に害を及ぼす恐れを認定している事を無視し、拡大解釈を通達して、取り締まりを責任放棄してきたのです。

この通達解釈が正当なものであるならば、業務として無免許で、他人の髪の毛をカットしたという事実を認定するだけでは、禁止処罰を与える事は出来ません。
ケガや損害を与えないでカットを仕上げれば、害を認定する事は出来ません。

一種運転免許だけで、白タクを行ったという事実を認定するだけでは、禁止処罰を与える事は出来ません(但し実際には一種運転免許以前に、道路運送法の一般乗用旅客自動車運送事業に抵触します)
客を目的地まで、何のケガも損害も与えないで送り届ければ、害を認定する事は出来ません。

無免許で税理士行為を行ったという事実を認定するだけでは、禁止処罰を与える事は出来ません。
依頼者が何の損失も損害も受けなければ、害を認定する事は出来ません。

つまり何でも無免許で職業とする事が許される理屈であって、免許制度の根幹を否定する通達なのです。

そしてこの拡大通達を修正しないまま、無資格者を野放しにしてきた結果、あはき法制定当時の立法が憂いていた通り、現実のものとして健康被害続発を生み出してきたのです。

厚労省ばかり批判しましたが、私的見解としてこの裁判は、司法によるダブルスタンダードであり、判断ミスであると言わざるを得ません。

何故なら、行為を禁じている第十二条の医業類似行為とは何か、人や行為を裁くために必用な「罪刑法定主義」を明らかにするため、高裁で医業類似行為の定義を明確にし、その定義に該当する行為(光・熱)を業務としているにも関わらず、『医業類似行為を業とすることを禁止し、同条に違反した者を同法十四条が処罰するのは、それが公共の福祉に反すると認められるからであり、しかも、医業類似行為が公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼすおそれがあるからである。』と、医業類似行為が健康に害を及ぼす恐れのある行為であると認定し、公共の福祉に反するものと認定し、合憲だと判示しているにも関わらず、行為の違反だけでなく、使用した器具の危険性の有無まで判断を拡張し、田中裁判長たちの反対意見が一切反映されなかった事にあります。

これは憲法第二十二条の職業選択の自由を根拠に、免許業務を無資格で行った場合、いちいち個別に危険性や損害の立証をしなければならない事であり、個別に立証しなければ罰する事が出来ないものと解釈出来るもので、全ての免許制度の根幹を否定するものであると言わざるを得ません。

使用した器具の危険性は、免許者が業務中に使用して危害を及ぼしてしまった場合、施術方法に過失があったのか、使用した器具に危険性があったのか、原因を明らかにする際に立証するべき事です。

しかし最高裁は、翌36年の別件の判例で、180度方向転換したかのように「国民の保健衛生上の見地から、公共の福祉を維持するためやむをえない措置として是認されなければならない」と判示しており、憲法で保障されている自由があっても、公共の福祉に反する恐れ(可能性)があるものは、制約を受ける事があってもやむを得ないと判示し、それによって生じる恐れを何ら立証する事なく、禁止法条だけを適用して処罰しております。

だからこそ立法において、法制化されたほとんどの免許制度は、個別な恐れの立証まで求めることなく制限されている筈です。
従って飲酒運転は、基準値以上の飲酒をしていないか、それを認定するだけで、個別に運転に与える影響を立証する事なく一律に禁じられております。
ただ、有罪であっても飲酒量によって量刑が違ってくるので、量刑判断の証拠としてアルコール濃度を検査しているだけであります。

又、健康に害を及ぼす恐れとは、何も骨折や打撲の様なケガばかりでは無く、田中裁判長、下飯坂裁判官、石坂裁判官が反対意見で述べている事も、公共の福祉に反する根拠そのものであり、単に手技の危険性や使用した器具の危険性だけで、法規制している訳では無い筈です。

職業免許制度とは、国民の幸福に享受すべき職業であっても、職業選択の自由以前に、公共の福祉に反する『おそれ(可能性)』のあるものを、立法に於いて議論を重ねた上で、法制化して制限しているものなのです。

又、この裁判の争点は、使用した光・熱等の器具の危険性を判示したもので、法律に基づかない手技の医業類似行為を容認した裁判では無く、『健康に害を及ぼす恐れのある業務行為に限局』とは、公共の福祉上、当然の見解を述べたものであり、無資格医業類似行為が、公共の福祉に反していないものと認定したものではありません。
そして何よりも『有罪』の判決が降された裁判です。

立法に於いて、健康に害を及ぼす恐れのある業務行為として認定され、禁止法条として制定された法律を、司法に於いて職業選択の自由を保障している憲法に反していないと認定されたにも関わらず、一行政の拡大解釈された局長通知の方が、効力が上位のような異常事態のまま半世紀以上も続いており、名称まやかしの無免許あん摩・マッサージ・指圧行為を野放しにしてきたのです。

そして禁止法条に誤りが無かった事は、国民生活センターの公表やベビーマッサージ死亡事故で、有罪が降された事で立証されております。

又、あん摩・マッサージ・指圧が、健康に害を及ぼす恐れがある行為として法規制されている以上、実質的に同じ行為をしている民間手技療法が、健康に害を及ぼす恐れが無いものと立証できる合理的根拠がありません。

あん摩・マッサージ・指圧が立法に於いて、無制限に許容する事が公共の福祉に反するものと認定され、法規制しているならば、同じ立法に於いて、無制限に許容する事が公共の福祉に反するものと認定された医業類似行為も、第十二条で禁じている以上、禁止法条である第十二条を厳格に適用しないのは、憲法十四条『法の下の平等』に著しく反していると言わざるを得ません。

又、あはき法第十二条が合憲な法条として認定され、削除される事なく、一字一句変更される事も無く、効力を有している事は、『健康に害を及ぼす恐れの無い医業類似行為は存在しない』という事です。

そして禁止法条第十二条を厳格に運用せず、民間手技療法をここまで無法地帯にしてしまった責任は、厚労省にあると言わざるを得ません。

今まで法律に基づかない無免許医業類似行為は、健康に害を及ぼす恐れは無いとの建前で、野放しにされてきました。しかし現実には、無資格ゆえに内々に示談で済ませ、無資格ゆえにニュースで報じられる事も無かったのであります。

近年の情報ツールの発展により、個人でも容易に情報発信が出来るようになり、被害者からの情報発信が社会に届けられる事によって、次々と違法な無資格医業類似行為の真実が明らかになってきました。

それでは、医業類似行為とは何か? 医業類似行為者とは何か?
あはき法第十二条では、「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない」と禁じております。

厚生省医務局長発令と仙台高裁(昭和二十九年六月二十九日)では、
「医業類似行為とは 疾病の治療又は保険の目的でする行為であって医師・歯科医師・あん摩師・はり師・きゅう師又は柔道整復師等の法令で正式にその資格を認められた者がその業務としてする行為でないものをいう」と定義しております。

あはき法第十二条では医業類似行為を禁じておりますが、厚生省医務局長発令と仙台高裁では、医業類似行為を定義し、存在する事自体は認識しております。
これを理解するには「医業類似行為」とは何か、「医業類似行為者」とは何か、そしてその後、その人たちの取扱いを国はどのようにしたのかを、少し踏み込んで理解しなければなりません。

これを分かりやすく解説しているブログがあります。本県出身で、「日本医史学会」「順天堂大学医学部医史学研究室」に在籍され、手技療法に関する数々の論文を発表しておられる、清野充典先生が、「医業類似行為」「医業類似行為者」の論文を、一般の方でも分かりやすいように、ブログでアップしております。

ご本人から参考記事として、紹介するご快諾は得ておりますが、ブログなので少しずつ9回に分けられております。ブログという性質上、アクセス数の観点から、一つにまとめて転載する訳にはいきませんので、9回分のリンクを貼りつけました。

これを読んでいただければ、現在社会に溢れる整体・カイロプラクティック・リフレクソロジー・つぼ療法等は、違法な無免許治療行為をしている事がご理解いただけると思います。

◎ 医業類似行為とは? ◎

医業と医業類似行為 1

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医業と医業類似行為 9



最終編集日:2015/11/11:オリエンタル 院長
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posted by オリエンタル院長 at 22:54| 無資格マッサージ問題